猫のワクチンの効果と目的を見極める
猫のコアワクチンが対象とする感染症には、
・猫パルボウイルス感染症
・猫カリシウイルス感染症
・猫ヘルペスウイルス1型感染症
の3つがあります。
上記3種の感染症ワクチンのうち、猫パルボウイルスワクチンがもたらす免疫(発症防御能)は、強固なものです。さらに、血液中の抗体価と発症防御能との間に相関性があることが分かっています。
その一方で猫カリシウイルスおよび猫ヘルペスウイルス1型ワクチンがもたらす免疫は、あくまで感染症の症状を軽減する、そしてウイルスの排泄量を低減することが目的です。
実は、この2種のウイルスは、感染後に症状が治まっても体内からウイルスがなくなることはありません。
特に猫ヘルペスウイルス1型では急性症状から回復した個体において、ウイルスが神経節などワクチンの効果が届かないところで休眠状態になり、体調がよくないタイミング(免疫力が落ちた時)に、再発症してウイルスを排泄、他の個体に感染していきます。
また、一度猫カリシウイルスに感染した猫は、治療してもウイルスを完全に退治することができず、約80~90%の猫は保菌状態(キャリア)になるといわれています。
このように、一旦感染したウイルスは、除去することができません。従って、この2種の感染症に対するワクチンの役割として期待されることは、猫パルボウイルスワクチンのような完全防御ではなく、
1.発症した個体への負担を減らすために「症状のレベルをできるだけ軽いものにする」
2.同時飼育ならびに地域の猫への感染をできるだけ防ぐために「体外へのウイルスの排泄量を抑える」
の2点になります。
このような理由から猫カリシウイルスおよび猫ヘルペスウイルス1型のワクチンは、接種を受けた後でも感染や発症がみられる可能性があります。